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味噌の科学

味噌が血圧を下げる

味噌で血圧が下がる?

味噌と高血圧予防

 味噌は優れた発酵食品である事はよく知られていますが、塩分との関係から高血圧予防とはうらはら、というイメージを抱いている方は多くいると思います。
 ところが、農林水産省食品総合研究所(茨城県つくば市)の蛋白質研究室・河村幸雄室長らの研究によって、みその抽出物に高血圧ラットの血圧低下作用があることがわかり、第47回日本栄養食糧学会(’93年5月・東京)などで発表され、大きな話題となりました。
 ちょっと意外な気がするかもしれませんが、みそに、血圧低下作用を持つ成分が含まれていることがわかったのです。
 

日本人の成人病や死因に影を落とす高血圧症

 日本人の主要傷病別の受療率について、昭和28年から約30年間の推移を見ると、結核の激減と、それとは対照的に高血圧性疾患の著しい増加ぶりが目立ちます。また、40年ごろからは、高血圧を第一危険因子とする脳血管疾患や心疾患、悪性新生物(がん)などにも増加傾向が見られます。
 一方、わが国の死因上位牽見ると、第1位はがんで、以下、心疾患、脳血管疾患と続いていますが、第2位と第3位はいずれも高血圧を第一危険因子とするものですから、この意味からも高血圧の予防は大変重要な課題であるといえます。このような受療率や死因の変化は、栄養摂取量の変化と密接な関係があります。

高血圧の予防方法

 高血圧の約半数は塩分の取り過ぎに起因するものであり、従って、塩分摂取を減らすことで、ある程度血圧を下げることができます。しかし、残り半分の高血圧については、いろいろな原因があって、予防法もそう単純ではありません。

食事による高血圧の予防は

  • 塩分摂取量を含め、正しい食べ方に改める。
  • 食品の持つ機能性を利用して血圧を下げる。

また後者の可能性としては、高血圧のみならず、がんや感染症なども対象となります

血圧低下のカギを握る、たんばく質の分解産物

 生体内における血圧調節系には、、食品と最も深い関係にある、血圧上昇ホルモン生成系であるレニン・アンギオテンシン系です。この「系」のどこかをある程度ブロックするなどして、反応を抑えてやれば血圧が下がることがわかっています。
 そこで私たちが注目したのは、強い血管平滑筋収縮作用を示す、アンギオテンシンIIと呼ばれる昇圧ホ7Vモンです。これは、アンギオテンシン1という前駆体から、アンギオテ’ンシン変換酵素(ACE)の作用によって生成されるものです。従って、このACEの作用を阻害する物質の存在が、ある食品で証明され、それが吸収されることが証明できれば、高血圧に対する血圧降下作用をもたらす食品由来の物質ということになります。

みその成分とラットの実験

  何故みそに注目したかについては、1つには、みそが伝統的な食品で日ごろ使用頻度の高い食品であるということもありますが、これまでの研究で、大豆たんぱくとみその成分中にACE阻害ペプチド、つまり高血圧防止ペプチドを発見したことに大きな理由があります。
 そこで、みその抽出物を高血圧ラットに投与したわけです。一方に味噌の抽出物を投与し、もう一方には同じ量の水を投与しました。味噌抽出物を投与したラットは時間経過とともに、血圧の降下が認められました(図)。また、実験結果では、どんなたんぱく質でも血圧が下がるのではなくて、やはり、みそ抽出物、あるい’は大豆たんぱくを与えたときにのみ下がること、みそのたんぱくの中には、主に血圧を下げるような方向に働く物質がある、あるいは消化過程で出てくるということが証明されたといえます。
人間の高血圧症改善への適用については、今後の臨床研究が望まれます。

血圧を下降する天然醸造の熟成味噌はこちら

参考資料:農林水産省食品総合研究所・蛋白質研究室長河村幸雄 室長
「みそサイエンヌ最前線⑤動物実験でわかった、みそ抽出物の血圧低下作用高血圧予防に役立つ、みその生理作用」